秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 ふだんは学生でにぎわう場所だが、準備が佳境の今、他に人影はなかった。

「川島って、意外と人使いが荒いやつだったんだね。ふだんはそんな雰囲気でもないのにさ。あーあ、疲れたー」

「ずっと立ちっぱなしだったもんね」

「自販機でコーヒー買ってくるわ。いつものでいい?」

「うん、ありがとう」

 ベンチは銀杏の並木沿いに置かれている。
 11月に入ったばかりで、まだ紅葉には少し早い。
 黄色と緑の葉っぱが入り交じる樹木の合間から、澄みきった青空が見える。

 ベンチの背に身体を預けて空を見上げていると
「ちょうどよかった。用事があったんだ」と声がして、視界が遮られた。
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