秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて

3)

「へえー。あの靭がねえ。公開プロポーズかぁ。わたしもその場にいたかったな」

 嵐のような大学祭騒動からしばらく経った日曜日。

 夏瑛と美岬は、理恵の話を訊くために昼食をともにしていた。

 叔父の誕生パーティー以来、美岬は理恵とすっかり仲良くなっていた。

「まあ、昔から突拍子ないことする人間ではあったけど。突然、失踪したりね。まあ、なんて言ってもアーティストだからさ。で、どうなったの。靭は学校やめるの?」

「先生は辞表を提出したみたいですけど、まだ学校が預かってるみたい」と美岬が答えた。

「始末書は書かされたみたいですけど」

  夏瑛が付け加えた。

「ふーん。まあ、靭は最近の新人画家のなかでは群を抜いてるからね。遅かれ早かれ『立花賞』獲るだろうって、業界でも囁かれているし。大学もいい宣伝になるから、靭を手放したくないんだろうね」
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