秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 えっ、(ゆき)にいちゃん? 学校でこういうふうに声をかけられるのは珍しい。

「ゆき……」と言いかけて慌てて「沢渡先生」と言い直す。
 思わず辺りを見まわしたが、さいわい誰もいなかった。

「あのさ、今月の23日の祝日、バイトだっけ?」

「うん、たぶん」

「今から、誰かに代わってもらえる?」

「まだ先だから大丈夫と思うけど、なんで?」

「一緒に京都に行きたいと思って」

「京都?」

「ああ、大学4年のころ、京都に滞在していたことがあったんだ、3カ月ぐらい。そのときお世話になったバーのマスターが店をたたむことになって。23日が最終日なんだよ」

「でも……わたしが一緒でもいいの?」

「もちろん。こんな可愛い彼女ができましたって、恩人に自慢したくてね」

 臆面なく言われ、夏瑛は真っ赤になってうつむいた。
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