秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「あのとき、あいつをめちゃくちゃに殴りつけたい気分だった。でもな……」
 
 少しだけ間があって、それから靭也は意を決したように口を開いた。

「おれも……同じようなことをしたことがあったんだ。貴子さんに」

 貴子の名が靭也の口から飛び出し、夏瑛の胸の奥底がずきんと疼いた。

「えっ?」

「話を聞いてくれるか。あまり聞きたくない話かもしれないけど」

 靭也が腕の力を緩め、夏瑛を正面に向かせた。

 見上げると、とても神妙な表情をしている。

「うん。いいよ。大切な話なんでしょう」

 靭也は少しだけ表情を緩めた。
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