秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「貴子さんは拒絶しなかった。でも、こう言ったんだ。『あなたの好きになさい。あなたをここまで追い詰めた責任の一端はわたしにもあるだろうから。でも、先生を裏切ることはわたしにとって死ぬことと同じ。だからわたしを殺したいのなら好きにすればいい』と」

 靭也は一度、ふーっと大きくため息をついた。 

「それを聞いて、それこそ顔から火が出るような思いだった。貴子さんに軽蔑されるようなことをしたんだと気づいた。自分がひどく醜悪に思えて、無様に逃げ出した。先生にも貴子さんにも一生合わす顔がないと、そのときは本気で思ってた」
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