秘密の恋はアトリエで(後編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「それからいろいろあって、3カ月ばかり過ぎて冬になった。鴨川べりに座って底冷えのする空気のなかに身を置いて、ふっと、おれ、何やってるんだろうなって思った。京都に来てはじめて、冷静に客観的に自分を見つめた。そして、東京に帰ってきちんとけりをつけなきゃいけないって心から思った」

「そう、だったんだ」

 それ以外の言葉は思いつかなかった。

「だから、だめな奴なんだよ。おれは。自分勝手に想いを募らせて、恩人の奥さんに無体なことをしかけて……。自暴自棄になって、他人に拾われて。夏瑛に自分が思っていたような人じゃないって言われて、愛想が尽きたって言われても仕方ないと思う。
 だから、北川のしたことも責められない気持ちがあってさ……」
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