この男、危険人物につき取扱注意!
千夏を辛い思いをさせてる事や、いたたまれなくなりつい抱きしめてしまった事、千夏に申し訳なく思っていた。
(でも…抱きしめても嫌がった感はなかったよな…?
多少は脈ありか?イケるか…
いや、ここは慎重に事を進めないと…
家に閉じ込めてばかりじゃ息も詰まるだろうから、買い物にでも連れ出すか?
着替えも欲しいだろうし…
さて、うさぎは何処へ…いった?)
『あ、びっくり!
坂下さんでも洗い物するんですね?
てっきり、下の人達がやるもんだと思ってました』
千夏が側を離れると、春樹は手元にあるイヤホンを耳につけ受信機のダイヤルを回し、周波数を合わせた。
『ッ!? 貴方でしたか…驚かさないで下さい。
…ええ。本来はそうです。
ですが、今日は皆んなを外へ追い出してしまいましたから、私がやるしかありません』
(ん?…いた!
台所…?
坂下がいるのか…?
でも、なにしに?)
『じゃ、わたし手伝います!』
(うさぎ、お前はそんな事しなくて良いのに…)
『結構です!』
(坂下、お前は見るからに怖いんだから、もう少し優しくしろ!)
『そんな事言わないで、私にも手伝わせて下さいよ?』
『そんな事より、食事まだなんですよね?
それ早く食べてしまって下さい。
片付きませんから』
食べる?…飯?
うさぎの為に用意してくれたのか?
ありがとよ!
『ありがとうございます!
これぞ日本人の朝食!って食事の横に、なぜ、コーヒーとクロワッサン?
なんか笑えちゃいます?
だって、この量にクロワッサンでしょ?
私、そんなに大食いに見えますか…?』
(いや、うさぎはもう少し食った方が良い)
『コーヒーが好きなあなたなら、パンの方が良いかと思って、たまたま合ったパンを出しただけです。別に無理に食べて頂かなくて結構です』
「クロワッサン…そんなもん組員で食う奴いるのか?」
春樹は独り言を言いながら、そのまま自分の部屋へと戻っていった。
『食べます!食べます!全て食べます!食べたら手伝いますからね?』
『もう坂下さんの意地悪!』
「ん?…坂下さんの意地悪?…坂下、おまえ何かしたのか?」
『坂下さんありがとう。いただきます!』
『このお浸し美味しい!
お味噌汁も、出汁がきいててホント美味しい。
これ、誰が作ったんですか?』
(確かに、久しぶりに食べたが実家飯美味かった。
今も食事当番…変わって無いのか?)
『さぁ?食事当番の者だと思いますが?』
『どうして…』
(ん?坂下どうした?)
『え、何か言いました?』
『何故、若に泣き付かなかったんですか?』
『あ、先程はお見苦しい姿をお見せして、すいませんでした』
「おい、見苦しい姿ってなんだ⁉︎
いつの事だ⁉︎
ナニがあったのかいえ!」
『辞めたいと言えば、良かったのに?』
(え?)
坂下の言葉に、春樹は手に持っていた受信機を落としそうになった。
『え?』
『擬装結婚なんて辞めたいと、若に泣きつけば良かったじゃないですか?』
「……坂下…」
『あ、スイマセン…
チーフに泣きつくだなんて…そんな事私には出来ません。
ましてや辞めたいだなんて…
チーフのやろうとしてる事が、ダメになるかもしれないじゃないですか?
そんな事、私には出来ませんよ』
「うさぎ…お前…」