この男、危険人物につき取扱注意!

『どうしてですか?』

『それは…
坂下さんは、組長さんに助けて貰ったんですよね?』

『え、ええ』

『組長さんに助けられたなら、組長さんに恩は感じてないんですか?』

『勿論、組長には感謝してます。借金まで立て替えて下さったんですから、言葉じゃ言い表せられないほど感謝してますよ』

『じゃ、何故、組を解散しようとしてるチーフのそばにいるんですか?
組長は反対してるんですよね?
この世界に入ったなら、組長の意に沿うように…
それが極道の筋ってモノなんじゃないですか…?』

『確かに、極道(この世界)じゃ、組長は親も同然。ましてや命助けて貰った組長(おやっさん)の意に背く事は御法度です。
ですが、若には若の考えがあっての事ですから、私は若に命を捧げると誓った身、組長に何を言われようと、若について行きます!』

『私も、ある意味チーフに助けられた身ですし、会社を大切に思うチーフの気持ちはわかります。
だから、何がなんでも試合放棄なんてしません!
どんなに組長(あいて)に打たれても、竹刀だけは絶対落としません!
坂下さんにも、頑張るって宣言しちゃいましたしね?』

「うさぎ…おまえ…」
千夏の気持ちを聴いた春樹は胸が苦しくなった。

『ほんと面白い人だ』

『もしかして、坂下さんって私の事好きだったりします?』

(なに?)

『な、なにを突然?』

『だって、姑の様に口煩く厳しいと思ったら、優しく気遣ってくれたりするじゃないですか?
それって、私の事が好きだから気に掛けてくれてるって事ですよね?』

『・・・・・』

「坂下…違うよな?
なぜ黙る? おい、答えろ!」

『あれ?…坂下さん?』

『さっきも話した通り、私は若一筋です。
女にうつつを抜かしたりしません!
バカな誤解はやめて下さい!』

「ホッ…」

『そんなにムキにならなくても…
私…振られた気分です』

(振られた気分って…)

『そんな事より、さっき組長と何があったんですか?』

(ああ、そこだ!
親父と何があった?)




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