この男、危険人物につき取扱注意!
二人が店内に入ると、上質な黒のスーツを着た中年の女性が出迎え、奥の部屋へと案内してくれた。
(いまの人…凄く綺麗な人だったなぁ…)
「直ぐにお持ちいたしますので、こちらで暫くお待ち下さい」
(お持ちするってなにを?)
一旦席を外した女性と入れ替りに、今度は若い女性がシャンパンの注がれたグラスを運んで来た。
(え…シャンパン…?
そんなの出してくれるの?
流石、高級店!)
春樹がグラスに手を伸ばすのを待って、千夏もグラスを手に取り口へと運んだ。
(あ、美味しい…
流石、セレブを相手にするお店だけあるわね?
でもこんな部屋にまで案内されて…
シャンパンまで頂いてなにも買わずに帰れるの?
チーフ…買うの?)
千夏はチラチラと春樹の顔を盗み見ていた。
(もしかして…坂下さんへのプレゼント?
私の意見を聞きたくて、私だけを連れて来た?)
そして、二人がシャンパンを飲み終わった頃合いを見計った様に、先程の中年の女性が再び現れた。
「お待たせ致しました。
わたくし店長の沢畠と申します」
そう言って女は二人に名刺を差し出すと、ポケットから取り出した白い手袋を嵌め、持って来た小さめのアタッシュケースを春樹の前に置くとゆっくり開けた。
その中には、光り輝くダイヤの石が沢山収められていたのだ。
(ぅわー…すっごーい
イエローにブルー…あ、ピンクも…
ホント綺麗…)
ダイヤモンドから放たれる虹色の輝きに、千夏は眼を輝かせていた。