極上弁護士の耽溺プロポーズ
一ヶ月後
一ヶ月後ーー。


「柊一くん、今日仕事何時に終わるかな?」

わたしはスマートフォンを握り締め、誰かが後ろを通るたびに意味もなくビクビクしながら、声を潜ませた。

社内は昼休みの時間だった。

電話の向こうから、少し低い柊一くんの声が返ってくる。

『椎葉に確認しないとわからないな。急用か?』

椎葉、という名前が出たことに、わたしはごくっと唾を飲み込んだ。

「……その椎葉さんと話がしたいんだ」

『椎葉と話?』

柊一くんは怪訝そうに声を吊り上げた。

変に思うのも無理はない。

椎葉さんとわたしはほとんど関わりがないからだ。

顔を合わしたのも数回で、おまけにわたしは椎葉さんに嫌われていた。

「う、うん。どうしても訊きたいことがあるんだ。今日仕事が終わったら柊一くんの事務所に行ってもいいかな?」

「それは構わないが……」

一体何の話なんだと問いたげな柊一くんを放置して、わたしはそそくさと電話を切った。
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