極上弁護士の耽溺プロポーズ
わけもわからないまま、わたしは柊一くんがひとり暮らしをしている高級マンションに連れて行かれた。

柊一くんはあのあと、「光希の荷物は明日にでも俺の部屋に届くから、取りに帰らなくていい」と言った。

あまりの独断専行の行動にぽかんとしてしまい、どうして柊一くんと一緒に暮らさなければいけないのか訊く隙さえなかった。

マンションに向かう車内でも、柊一くんは何かを考え込むように黙ったままで、いつもとのギャップにわたしはひどくうろたえていた。

「それでわたし、どうして柊一くんと暮らすの?」

広いリビングに通されると、わたしは柊一くんを問い質した。

「それより、どこまで覚えてるんだ?」

けれど柊一くんはわたしの質問を即座に一蹴し、
聞き返してくる。

「……え、だから……一年前までだと思うけど……」

わたしはテンポを崩されたじろいだ。

柊一くんの話し方がいつもよりきつい。

何かに苛立っているような、そんな素振りだ。

何も怒らせるようなことはしていないはずだけどと思いながらも怯んでしまう。

「……会社のことは?」

「会社?」

「……ああ。人間関係とか」

「そういうのは普通に覚えてるけど……」

とはいえ一年前の記憶しかないから定かじゃない。

そんなことよりも、柊一くんは一体何を訊きたいのだろう。

わたしの表情を注意深く窺っているような目つきで見つめられ、落ち着かない。
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