極上弁護士の耽溺プロポーズ
わたしは腰が抜けたようにその場に座り込んでしまう。

パニックを起こしそうだった。

一年間の記憶なんてなくても大丈夫だと思っていたけれど、やっぱりなかったら困る!

柊一くんとどう接していいかわからない!

激しい動悸に見舞われながらも、わたしは柊一くんのベッドルームのドアを開けた。

大きなベッドと、同じデザインのサイドテーブルー以外、特に目立ったものは置いていないシンプルな部屋だった。

ためらいながら、そっとベッドに上がる。

けれど横になってしなやかな毛布を掛けた途端、全身に緊張が込み上げてきた。

柊一くんの匂いがしたからだ。

柊一くんはずっと、同じ香水をつけているようだった。

さわやかな匂いの中にほのかに甘い香りがして、もう体に染みついているのかと思うくらい、柊一くんと一体化している香りだ。

わたしはこの匂いが好きだった。

……もちろん好きと言っても、恋愛的な意味ではない。

少なくとも記憶のない今はそのはずだ。

柊一くんがお風呂から上がってくる前に寝てしまおうと思っていたのに、どんどん目が冴えてなかなか眠りに落ちてくれなかった。

焦りがさらに入眠を妨げる。

そうしているうちに、柊一くんがベッドに入ってきた。
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