極上弁護士の耽溺プロポーズ
出し抜けにベッドルームのドアが開いて、物思いに耽っていたわたしは飛び上がりそうになる。

「⁉︎」

一体いつの間に入ってきたのだろう。

いきなり現れたスーツ姿の女性は、柊一くんの隣にいるわたしを捉えた瞬間、ぎゅっと眉をしかめた。

「あなたは?」

きつい視線に、思わず固まってしまう。

涼しげな一重の瞳は、わたしを観察するように凝視してくる。

「……椎葉(しいば)?」

柊一くんが目を覚ますと、彼女はズカズカ歩み寄ってきて毛布をひったくり、柊一くんを乱暴に叩き起こした。

「今日は朝一から遠方の裁判所に行かなければならないと申し伝えたはずです! 何時だと思ってるんですか! 急いでください!」

わたしはその手荒さに呆気に取られた。

彼女はわたしを一瞥し、柊一くんに問いかける。

「それで、こちらはどなたですか」

「……ああ。俺の恋人だ」

「わっ……柊一くんっ」

平然と恋人だと言い切った柊一くんに、わたしは思わず取り乱しそうになった。

「恋人? 先生の? こんな平凡なのがですか?」

片眉を吊り上げて冷笑と呼べるような笑みを浮かべた彼女に、わたしはなんとも言い表せない気持ちになった。

初対面の相手にここまで遠慮なくものを言われたのは初めてだ。
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