極上弁護士の耽溺プロポーズ
けれど柊一くんはすぐに、何かを思い出したように足を止めた。

「ああ、そうだ。椎葉に預けていたここの鍵だが、光希に渡しておいてくれないか」

「え?」

「光希、何かほしいものがあれば、ここの地下で買えばいいから。行ったことあるだろ、地下のスーパーマーケット」

「あ、うん」

「でもそれ以外はここを出ないでくれ。心配だから」

柊一くんはそれだけ言うと、エントランスホールを抜けて行ってしまった。

残された椎葉さんの目がわたしに恐ろしいほど圧力をかけてきて、思わず体が竦んでしまう。

ガチャン!

椎葉さんは十文字に組まれたオーク材のテーブルの上に、投げつけるように鍵を置いて去っていった。

「……」

一体なんだったのだろう。

わたしは二人が出て行ったあと、しばらく立ち尽くしていた。

椎葉さんが怒っているようだったけれど、理由がわからない。
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