極上弁護士の耽溺プロポーズ
「昨日は本気で焦ったよ。光希が約束の時間に現れないなんて初めてのことだったから」

ベッド際の小さな椅子に座りながら、柊一くんはさりげなくネクタイを緩めた。

柊一くんは昨夜、夕食の約束をしていたわたしが何の連絡もなく来ないのを不審に思い、方々を探してくれたらしかった。

「びっくりさせてごめんね。それにいっぱい迷惑かけちゃった……」

「迷惑というか心配はかけられたな」

「うん、ごめんね……。……あ、仕事抜けてきたの?」

「ああ、今日は日曜だから大丈夫だよ」

わたしは少し気が引けた。

なぜなら柊一くんはそう言いながらもスーツ姿だからだ。

柊一くんは弁護士で、わたしは彼の事務所が土日もクライアントの相談に応じていることを知っている。

「わたし、元気だから無理しないでね」

「無理してないよ」

柊一くんは立ち上がり、傍らに置いてあったフルールバスケットからリンゴを取り出した。

「それより光希、リンゴ剥いてやろうか。好きだろ」

「え、柊一くん剥けるの?」

「ああ。料理はできないが刃物は得意だ」

にっこり笑ってシャツを腕捲りする柊一くんに、それってどうなの、と突っ込む。

柊一くんが言うとちょっと怖い。
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