極上弁護士の耽溺プロポーズ
柊一くんは法科大学院を卒業後、一発で司法試験に合格したくらいの明晰な頭脳と、人目を引くきれいな容姿を併せ持つ才色兼備で、どこを取っても完璧だ。

それなのに時々、何かを秘めているような、窺い知れない影を感じることがある。

けれどそれがまた神秘的な雰囲気を醸し出していて、柊一くんの魅力をさらに引き立たせているようにも思う。

平凡なわたしとは、正反対だった。

「ほんとだ、上手」

得意と言ったとおりするするリンゴを剥く柊一くんに感激しながら、わたしはその造りものみたいな横顔を見つめた。

柊一くんはわたしの四つ年上の二十七歳で、お父さんが経営する法律事務所の弁護士だ。

わたしは商社の事務員をしている。

一見なんの接点もないわたしと柊一くんが知り合ったのは、まだ小学生の頃だった。

わたしが友だちの家に遊びに行った帰り道に迷子になったのを、たまたま通りかかった柊一くんに助けてもらったのだ。

心細くて泣きじゃくるわたしの支離滅裂な話を、柊一くんは投げ出すことなく聞いてくれ、小さな手を引いてわたしを家まで送ってくれた。

それから年が離れていても、ずっと付き合いが続いている。

ひとりっ子のわたしにとって、柊一くんは幼なじみで大親友と同時に、お兄ちゃんみたいな存在だった。

優しくて絶対に嘘をつかない柊一くんに、わたしは友人の中でも特に信頼を寄せている。
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