極上弁護士の耽溺プロポーズ

「何うっとりしてるんですか」

お茶出しを終えた椎葉さんがトレーを片手に顔を引き攣らせていて、わたしははっとした。

「え? あっ、えっと……、柊一くんってほんとに完璧だなと思って……」

「のろけですか? あなた意外と根性あるんですね」

「えっ! やっ、そうじゃなくてっ……」

「まあ私も、あえて否定はしませんけど」

「……で、でもたまに……怖くてよくわかんないときもありますよね……」

強引に同居を迫った柊一くんを思い出して、わたしはとっさに顔を曇らせてしまう。

柊一くんはこんなに完璧なのに、どうして自分なんかを恋人にしているのだろう。

「怖い? 何かされたんですか?」

「い、いいえ、別に……」

「まあ先生は仕事上、刑事事件などではクロをシロにすることもありますよ。あなたからすれば怖いことかもしれませんね」

そういう話ではなかったけれど、思いがけず興味深い話だった。

弁護士はクライアントの利益のために全力を尽くす。それがたとえ悪であっても、ということだろうか。

テレビなどを見ていると判決が納得できない事件は多々ある。

それらが頭をよぎった。

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