極上弁護士の耽溺プロポーズ
夜になって柊一くんのマンションに帰っても気が晴れなかった。

深い溜め息が漏れる。

普段は楽観的なくせに、落ち込み出すと歯止めが利かなくなるのがわたしの悪い癖だった。

先輩の言葉と椎葉さんの見限ったような台詞が頭の中でこだまする。

自分の存在を否定されたような、無力感が襲ってきた。

些細なことでここまで陥るなんて、間違いなく情緒不安定になっている。

……柊一くんだってきっと、わたしがいなくてもなんともないんだ。

全部がこじれるようにないまぜになって、話が飛躍していることに気づかなかった。

まるで当てつけみたいに、わたしはストレスを柊一くんに向けてしまった。

「わたしやっぱりもう、仕事に復帰したい……」

リビングルームで寛いでいた柊一くんに、わたしは暗い顔で呟いた。
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