極上弁護士の耽溺プロポーズ
「……光希、その話は」

柊一くんは溜め息をついた。

昨日収まりをつけたはずなのに早々に蒸し返されて、柊一くんは目に見えて不機嫌そうな顔をする。

その表情に、わたしは行き場のない気持ちが溢れ出してしまう。

「だってっ……お医者さまも一過性のものだって言ってたしっ……普段通りの生活をするほうがいいはずだよっ……。そしたら柊一くんとのことだってきっと自然に思い出せるはずだもんっ……」

「……何度も言わせないでくれ。俺はまだ戻ってほしくない」

柊一くんは憤りを抑えて唸るように言った。

「でもわたし……このままいつまでも柊一くんに甘えてちゃいけないっ……」

わたしは拳をギュッと握り締めた。

わたしにもプライドがある。

「……光希は俺に甘えてなんかいないよ」

苦々しそうに眉を寄せた柊一くんに、わたしは胸が急速に締めつけられた。

それでも言わずにはいられなかった。
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