極上弁護士の耽溺プロポーズ
翌日、わたしは柊一くんの事務所に向かった。

わたしのマンションの鍵を返してもらうためだ。

きっともう柊一くんも拒まないだろう。

おとといのようにきっと、わたしを突き放す……。

腕時計を見ると、ちょうど正午を指していた。

わたしの重苦しい心とは裏腹に、晴れ渡った空の下はランチに出るOLで賑わっている。

八階でエレベーターを降りて事務所のドアに手をかけたとき、不意に中から話し声が聞こえた。

「なんですかそれ! 先生ともあろう人が手も出していないんですか!」

驚嘆したような椎葉さんの声色につられてビクリとし、わたしはとっさに手を戻した。

「……光希が相手だと何もかもうまくいかない」

続いて柊一くんの低い声も聞こえた。

自分の名前が出たことに、わたしは二人の会話
内容を悟る。

一瞬で顔が真っ赤になった。
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