極上弁護士の耽溺プロポーズ
「それで昨夜の家出につながるわけですか。あはは! こんなおもしろい話、私にしていいんですか? しばらくこれでいじりますよ」

わたしは俯いてドアの横の壁に凭れかかりながら、立ち聞きなんてよくないと、自分を非難した。

それにこんな盗み聞きのようなことで、救われることなんかありえないのだ。

中の状況はわからない。

それでもこの会話から、今事務所には柊一くんと椎葉さんしかいないことが窺えた。

「なんだ、慰めてくれないのか?」

「どなたか女性でも呼び出しておきましょうか?」

当たり前のように、軽い口調だった。

自分でした警告通り、わたしは聞かなければよかったことを耳にしてしまった。

すぐに、固まった体を向き直らせる。

「それとも、私が相手をして差し上げてもいいですよ?」

椎葉さんの声が、立ち去ろうとするわたしを追うようにして捕まえた。

息が苦しくなる。

……椎葉さん、今、なんて言ったの?
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