極上弁護士の耽溺プロポーズ
柊一くんの気配が近づいてくる。

わたしはピクピク引き攣る瞼を必死に閉じて柊一くんが去るのを待った。

「……」

柊一くんの手が、そっと髪に触れた。

ひんやりした指の感触に目を開けてしまいそう
になる。

けれど柊一くんはそれに気づかなかったようで、しばらくわたしの頭を撫でていた。

これは柊一くんの癖だ。

わたしにいいことがあったときは「よかったな」、つらいことがあったときは「大丈夫だ」って、わたしを思いやってくれる優しい手の感触。

胸が、どんどん熱くなっていく。

「……誕生日おめでとう」

そのとき、耳元で囁く声がした。

頭の中が一瞬で真っ白になる。

柊一くんはすぐに部屋を出て行ってしまった。
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