極上弁護士の耽溺プロポーズ
本能に突き動かされ、自分が何をしているのか、これから何を言おうとしているのか、何もわからなかった。

「……光希?」

柊一くんはわたしの真意を測りかねるように声を押し殺しながらも、腕を振りほどかなかった。

顔を埋めた柊一くんの胸から大好きな匂いがして、感情がひとりでに溢れ出す。

「……嫌だ」

「……?」

「……柊一くんが……ほかの女の子や……椎葉さんと寝るなんて……絶対に嫌だ」

声が出ていなかったかもしれないと思ったけれど、柊一くんの体が一瞬強張ったことで、きちんと届いたことを察した。

密着したまま、しばらく沈黙が流れた。

「……今日事務所に来たのか」

寄りかかるわたしの体をそっと起こして、柊一くんはわたしを見下ろした。

「ごめんね……」

「どうして謝るんだ」

柊一くんの大きな両手がわたしの頬を包む。

「俺が不用意にあんな話をしたのがいけない」

「……それでも、……柊一くんに謝りたかったんだ……」
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