極上弁護士の耽溺プロポーズ
「光希、ずぶ濡れじゃないか! どこに行っていたんだ⁉︎」

前触れもなく降り出した雨に打たれ、わたしはその雨露に体の芯まで浸食されたようだった。

髪からポタポタと滴り落ちる雫を拭うこともしなかった。

わたしが立ち尽くしている大理石のエントランスには、すぐに水溜りができた。

「体が冷たい……とりあえず風呂に……」

目も当てられない姿で柊一くんのマンションに戻ってきたわたしに、柊一くんは目を瞠って驚いた。

それでも柊一くんはわたしの手を引いて、優しく気遣うように部屋の中に導く。

高級そうな絨毯に無数の水滴が染み込んでいくことや、柊一くんのシャツが濡れることなんてお構いなく、わたしの体を引き寄せた。

雨の雫に混じって、涙がぽろぽろと流れ出す。

大粒の涙が後から後から込み上げてきて、止まらない。

「……光希?」

「嘘つきっ……!」

上擦ったわたしの声に、柊一くんはピタリと足を止めた。
< 82 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop