極上弁護士の耽溺プロポーズ
「わたしが柊一くんの恋人だったなんて、どうしてそんな嘘……!」

呻くような声を出して柊一くんに摑みかかった。

「……思い出したのか」

柊一くんは失意したように声を落とした。

それがこの数日間のことが全て空事だったと決定付け、わたしをさらに追い込んでいく。

「ひどいよ……ひどすぎる……!」

わたしは彼氏にだけじゃなく、親友にも裏切られたのだ。

「……恨み言はあとでいくらでも聞く」

柊一くんはわたしの腕を引っ張ってドレッシングルームに向かった。

わたしは足を踏ん張って柊一くんの手を振り払う。

「放して!」

「……風邪をひかせたくない」

「騙してたくせに心配なんてしないで!」

突っぱねる叫び声に、柊一くんは表情を失ってその場に凍りついた。

「騙して恋人のふりなんかして、柊一くんはそれで満足なの……!」

「……満足なわけがない」

柊一くんは責め苦を受けたように顔を歪めた。

わたしは騙されていたことが頭にきていて、そんな表情にすら神経を掻き毟られた。
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