極上弁護士の耽溺プロポーズ
「……え？」

「まあ私が彼女に、彼を引っ掛けてもらえるように頼んだのですが」

意味がわからなかった。

次々と疑問が湧いてくる。

「その彼女、表向きは秘書なんですけど、少し裏の顔がありましてね」

椎葉さんは毒を含んだような笑いを浮かべる。

「え……？」

「ああ、あなたにこんなことまで話す必要はありませんね。とにかく彼が今後どうなろうがあなたは気にしないことです」

口の端を上げた椎葉さんの狡猾そうな表情に、わたしは彼女の影の部分を見たような気がした。

「彼に……何をするつもりなの……？」

「さあ？　それは私の知ったことではありません」

「……どうしてそんなこと……」

「先生が苦しんでいたからです。あなたを車道に飛び出させるほど追い詰めたあの男が憎くてたまらないと」

「でも……」

ひどい、とまでは声に出なかった。椎葉さんにそんなきれいごとは通用しない。
< 93 / 119 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop