白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

「十環……

 悪かったな。

 お前には、全く関係ないことだったよな」


 俺は両手で
 髪をワシャワシャかき乱し
 十環に向かって軽く微笑んだ。


「お前のその髪色
 宝石のブルートパーズみたいに綺麗だな。

 ま、最初見たときは
 かき氷のブルーハワイみたいで
 おいしそうって思っちゃったけどな」


「……なんだよ……それ」


 照れたようにうつむく十環の口から出た言葉は
 敬語が消えていて
 ちょっとだけ俺に心を開いてくれたような
 気がして嬉しくなった。


「余計なお世話かもしれないけど
 十環は絶対に笑顔の方が似合うと思うぜ」


「笑顔なんて……似合わないから……」


「お前をもし
 心から笑わすことができたらさ……

 俺の……

 友達になってくれない?」


 自分が発した言葉なのに
 恥ずかしすぎだし!!!


 絶対俺……


 顔が真っ赤だ……



「あなたには……ムリですよ。
 俺を笑わせるなんて」


「そんなの
 やってみなきやわからないだろ?

 な、明日も十環に会いに来てもいいか?」


「……

 あの露出魔の
 お姉さんに付きまとわれるよりは……

 あなたの方が……

 マシですけど……」


「じゃ、決まりな。

 俺、今日と同じ時間に
 またここに来るからさ。

 あ、でも……
 学ランで来なきゃいけないし
 目立ちそうだから
 あそこの神社で待ち合わせってことで」


「俺が神社に行ってもまだ来ていなかったら
 そのまま帰ります。

 あなたを待つつもりはありませんから。

 でも、間に合うんですか?」


「間に合う! 

 っつうか、絶対に間に合わせる。
 
 6時間目をサボってバスに飛び乗れば
 間に合うし」


「授業をサボるって……

 よくできますね、そんなこと」


「ブルーハワイみたいな色で
 平気に学校に行ってる十環に言われてもね」


「俺は……

 授業は休まず出てるし……」


「アハハ」


 視線を地面に向け
 小学生みたいにふてくされている十環を見て
 思わず声に出して笑ってしまった。


 十環は相変わらず、ムスっとしてるけど。

 
 俺はカバンからあるものを取り出すと、
 十環に向かってひょいっと投げた。
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