白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)
『シルキー』って言ったら、
OLに大人気のファッションブランド。
『シルキーの服を纏うために、私は働く』
っていうファンがいるくらい
超有名企業。
結愛さんのお父さんが
大企業の社長ってこと?
「私ね
将来は『シルキー』を継いでくれる人と
結婚しなきゃいけないの。
だから……
私のお父さんが
勝手に十環くんのことを調べたみたいなの。
ごめんなさい」
結愛さんのお父さんは
俺が会社を継ぐのにふさわしいかどうか
判断したってことか。
それは、反対するよね。
中学の時は、髪を水色に染めて
クラスメイトも先生も無視し続けて
毎日TODOMEKIに通っていたんだから。
そして今でも
TODOMEKIにはたまに顔を出す。
暴走族がシルキーを継いだとなっては
会社の信用がガタ落ちだろうし。
それに
この俺に務まるはずがない。
大企業のトップなんて。
でも……
結愛さんと別れたくない。
できることなら結愛さんに
24時間俺の隣にいて欲しいくらいなのに。
「本当はね
もっと早くに言わなくちゃって思っていたの。
でも……
階段で初めて会った時に
十環くんのことが好きで好きで
たまらなくなっちゃって。
私の家のことなんて話したら
付き合ってもらえないかもって思ったら
怖くて言えなくて」
「一つ聞いていい?
素直に答えて。
結愛さんの、本当の気持ち。
俺のこと、どう思ってる?」
「……大好き」
甘く切ない声が俺の耳に届いた。
俺は勢いよくブランコから降りると
ブランコに座る結愛さんを
後ろから抱きしめた。
このまま、離したくない。
ずっと俺の腕の中に閉じ込めておきたい。
でも……
結愛さんの耳元で
俺は悲しみを含んだ声を発した。