白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

「俺さ
 TODOMEKI(とどめき)っていう
 暴走族のチームに入ってるんだ」


「十環が……暴走族?」


「って言っても
 爆音でバイクを乗り回すとか
 一般人にケンカを吹っ掛けるとか
 そういうことはしてない。

 毎晩、倉庫に集まって
 しゃべったり、戦い方を教えてもらったり
 そんな感じ」


「へぇ~ 意外だな。

 十環がケンカしてるところとか
 想像できないし」


「多分俺
 一颯と戦ったら勝つ自信あるよ。

 もう2年半
 毎日叩き込まれてるからさ。戦い方を」


「こえ~!! 

 十環って、関わると危ない奴だったんだな」


「ま、大事なものを守る時以外は
 ケンカするなって総長に言われているから
 一颯に手を出すことはないと思うよ」


「それなら、いいけど」


「そのTODOMEKIには
 創設当時から仲が悪い
 暴走族チームがいるわけ。
 
 白夜会(びゃくやかい)って言うんだけど。

 この2つのチームの間で
 争いの火種が点火されれば
 すぐにでも族同士の抗争が始まっちゃうわけ」


「十環が明虹学園に行かないことと
 何か関係でもあるのかよ?」


「大あり。 

 百夜会の総長の弟がさ
 脱退して明虹学園にいるんだよ。

 俺たちより1っこ上で、今、高1。

 次期総長って言われていた人で
 なんで、白夜会をやめてまで
 明虹に入ったかは知らないんだけどね。

 俺はまだ中3だから
 TODOMEKIメンバーだってことは
 その人に知られていないと思う。

 だけど俺が明虹学園に入って
 TODOMEKIのメンバーだってばれたら
 それだけで族同士の抗争に
 発展しかねないんだよね。

 明虹学園がある地域は
 白夜会の縄張りだから」


「じゃあさ、十環はどうするわけ?

 中学卒業したら」


「高校なんて行かずに、仕事する。

 それで
 夜はTODOMEKIのみんなと過ごすかな」


「そんなに良いところなの?」


「ああ。

 総長のことは本当に尊敬しているし
 返せないほどの恩もある。

 メンバーはみんな俺より年上で
 俺が一番下っ端だけどさ。

 こんな俺でも
 仲間って思ってくれて、いい人だらけ。

 だから俺は
 TODOMEKIを辞める気も
 仲間を裏切る気もないんだ」


 俺は誰にも見せたことがなかった
 1枚の写真を
 一颯に差し出した。
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