白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)
十環の心の闇

「一颯……

 どうしているかな……」


 一颯と一緒に
 明虹学園に行ったのは
 もう1週間以上も前。


 あれからずっと
 一颯とは会っていない。


 学校が終わって校門を出たら
 『一颯がいるかも?』と
 少しだけ期待をしてしまう。


 でも
 学校の前にも、神社にも
 一颯の姿はない。


『一颯と会わない』と決めたのは
 俺自身。


『一颯よりも、TODOMEKI』を
 選んだのも俺。


 それなのに
 心にぽっかりと穴が開いていて
 冷たい空気が通り過ぎるたびに
 締め付けられたように心が痛む。



 そしてもう一つ。



 一颯の影が
 俺の頭から離れた瞬間
 今度はキャラメル色の
 フワフワな髪の眠り姫が
 脳のスクリーンに映し出される。


 会ったのはあの時だけ。


 どんな人なのかもわからないはずなのに。


 それなのに
 俺の思いは日に日に強くなって苦しくなる。


『今すぐ、結愛さんに会いたいな』って
 思いが。



 俺は明虹学園に入らないと決めた。


 だから
 今すぐどころか
 もう結愛さんに会うことはないと思う。


 その現実を突きつけられるたびに
 唇を強くかみしめながら
 押しつぶされそうな胸の痛みが
 過ぎるのを待つ。


 俺は
 心が落ち着きを取り戻したのを感じて
 日が落ちた暗闇の中
 自転車をこいだ。


 そして笑顔を作って
 TODOMEKIのみんながいる
 倉庫のドアを開けた。


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