【短編】澱(おり)
グダグダと過ごしているうちに夕方になったので、簡単にカレーを作った。
ひとりで食べる食事は味気ないが、しかし裏切り者の父がいてくれたらとは思わない。
「……夜には天気が不安定になり、場所によっては局地的な大雨が発生する可能性もあるため、これからの時間の外出は……」
食事を終えて、洗い物をしていたら、テレビから夜のニュースが聞こえてきた。
これから雨が降るらしいが、母は傘を持っているのだろうかと心配になって、メッセージを送ろうとスマホを手にした時、急にそれが振動した。
着信画面には、結衣の名前がある。
「もしもーし。どしたのー?」
「あー、沙奈。今、家にいる?」
「うん。何?」
「実はちょっと、数学のノート借りたくて」
「数学? 勉強しない結衣が? テスト前でもないのに?」
「うるさいなぁ。いいから貸してよ」
「うーん。じゃあ、明日でいい?」
「いや、実は今もう、沙奈んちのアパートの前の公園にいるんだよね」
「は?」