【短編】澱(おり)
口々に言った結衣と翔太くんは、
「じゃあ、俺らは帰るね」
と、逃げるようにふたりで走り去ってしまう。
そして取り残された、私と圭吾。
何だかなぁ、という感じだけど。
さすがにもう、怒る気力も湧かず、肩をすくめて私は、圭吾に向き直った。
「私たちの過去のことに、ふたりを巻き込まないで」
「悪いとは思ってるよ。でも他に方法なかったし」
吐く息が白い。
住宅街の夜の公園は、怖いくらいに静かだ。
「そこまでして、また私に会いたかった理由って何?」
「心配してたって言っただろ」
「私はこの通り、元気だよ。見てわかったでしょ? ってことで、満足した?」
冷たく言い放つ私に、圭吾は話にならないというような顔をする。
本当はもう少し、優しい言い方はできたと思う。
けれど、背が伸びて、声も低くなって、あの頃とは全然違う圭吾への戸惑いで、私はどういう態度でいればいいかわからなかったのだ。
「お前ほんとに沙奈かよ。キャラ変わりすぎ。昔はもっとにこにこしてたろ。偽物なんじゃねぇの?」
「バカじゃん。小学生の頃と比べないでよ。4年も前だよ? っていうか、そっちこそ昔はサッカーボールばっかり追いかけて走りまわってたくせに、今じゃ見る影もなくて最悪」
「じゃあ、俺らは帰るね」
と、逃げるようにふたりで走り去ってしまう。
そして取り残された、私と圭吾。
何だかなぁ、という感じだけど。
さすがにもう、怒る気力も湧かず、肩をすくめて私は、圭吾に向き直った。
「私たちの過去のことに、ふたりを巻き込まないで」
「悪いとは思ってるよ。でも他に方法なかったし」
吐く息が白い。
住宅街の夜の公園は、怖いくらいに静かだ。
「そこまでして、また私に会いたかった理由って何?」
「心配してたって言っただろ」
「私はこの通り、元気だよ。見てわかったでしょ? ってことで、満足した?」
冷たく言い放つ私に、圭吾は話にならないというような顔をする。
本当はもう少し、優しい言い方はできたと思う。
けれど、背が伸びて、声も低くなって、あの頃とは全然違う圭吾への戸惑いで、私はどういう態度でいればいいかわからなかったのだ。
「お前ほんとに沙奈かよ。キャラ変わりすぎ。昔はもっとにこにこしてたろ。偽物なんじゃねぇの?」
「バカじゃん。小学生の頃と比べないでよ。4年も前だよ? っていうか、そっちこそ昔はサッカーボールばっかり追いかけて走りまわってたくせに、今じゃ見る影もなくて最悪」