【短編】澱(おり)
「は? 最悪なのはそっちだろ。俺はこの4年間、ずっとお前のこと心配してたのに、なのにお前は俺のこと思い出したくないって、逃げて」

「だって、そりゃあ、あんなことがあったんだよ? 私は、過去から目を背けることでしか、立ち直れなかったから。それなのに急に現実の圭吾が現れたら、逃げるに決まってるでしょ」


静かだったはずの夜に、ゴロゴロと空が鳴り始めた。

ぽつり、ぽつりと、雨粒も落ち始める。



「ねぇ、雨降ってきたし、もういいでしょ? お互い、今は別々のところで元気にやってるってことで、いいじゃない」

「本当に、もう二度と俺とは会うつもりないって感じの台詞だな」

「結衣と翔太くんのこともあるし、偶然にでも会わないことはないと思うけど、でももう私たちが望んで会う理由はないでしょ? 今さら、幼馴染にも戻れないし」


ぽつぽつと、どんどん雨粒が大きくなる。

圭吾の頬を伝ったそれは、何だか涙に似て、私は拒絶しているはずなのに、なのにこの前と同じように背を向けることができない。



「なぁ、だったら俺らの人生って何?」

「……え?」
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