しあわせ食堂の異世界ご飯6
一 具沢山のおにぎりと豚汁
一 具沢山のおにぎりと豚汁

 ジェーロ帝国の首都、その路地裏の一角に『しあわせ食堂』はある。
 店内の様子がよく見える大きめの窓と、入り口の前には小さな花壇。
 中は白と水色のストライプの壁紙が可愛らしく、店主の手入れがしっかり行き届いた落ち着く空間。
 カウンターが五席、ふたり掛けのテーブル席が二席と、四人掛けのものが三席用意されている。
 いつもは店員、客ともに笑顔のあふれるいいお店なのだけれど――今日は、調理担当のアリアの覇気がまったくなかった。

 アリアは厨房で調理をしつつ、いつでもため息が出てしまいそうな表情をしている。疲れているよりも、憔悴していると言いたくなってしまいたくなるほどだ。
「はぁ……」
 ついにアリアの口からため息がこぼれ落ちてしまった。
 元気のない料理人は、アリア・エストレーラ。
 胸の下まで伸びた茜色の髪は綺麗に手入れがされていて、水色のリボンでひとつに結んでいる。
 真っ白のエプロンは料理をするときの戦闘服で、お気に入りの一着。
 料理が大好きで、仕事の息抜きにも料理をしてしまうほど。
< 2 / 160 >

この作品をシェア

pagetop