しあわせ食堂の異世界ご飯６
二　かぼちゃのほくほくグラタン
二　かぼちゃのほくほくグラタン
　冷たい風の吹く日が多くなり、肌寒さから凍てつくような冬の気配を感じるようになってきた。
　まだ雪は降っていないけれど、きっとそれもすぐだろう。

　そんな中、大きな声が響く。
「あああ寒いっ！　でも、体を動かせばそんなものはすぐに吹っ飛びます……！」
『わんっ！』
　アリアが自室からしあわせ食堂の裏庭を見ると、朝から鍛錬をしているシャルルと、それに付き合っているクウの姿が目に入る。
　クウは、捨てられているところを近所の子供が拾い、しあわせ食堂で引き取ったポメラニアンのような白い子犬だ。
「元気だなぁ……」
　アリアの生まれ祖国であるエストレーラは温暖で、冬でもジェーロほど寒くなることはない。そのため、いまだにこの国の冬に慣れていない。
　息を吐くと白くなり、それを見るとさらに寒さが増してしまう。
「こんな日は温かいメニューが食べたいよね」
　なにかいいものはないだろうかと、アリアは腕を組んで悩む。お鍋やおでんはもちろんだが、熱々の肉まんなども恋しくなる。
< 33 / 160 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop