しあわせ食堂の異世界ご飯6
(定食屋は時間との闘いでもあるからなぁ……)
 メニューとして出す場合、朝の仕込みの最初の作業は下茹でになりそうだとアリアは思う。そうしなければ、コンロが足りなくなってしまう。
 かぼちゃを下茹でしている間にも、やることはある。
「まずは鶏肉を焼きます! こんがり美味しそうな焦げ目をつけたらオッケー」
「肉からだな」
「うん」
 フライパンに油をしいて、皮を下にして鶏肉を焼いていく。ジュワアァという音と、パチパチ脂の跳ねる音が響く。
「あ~いい匂いだな」
 カミルが鼻をふんふんさせながら、じっと鶏肉を見ている。香ばしい香りときつね色の焼き色は、それだけで食欲を刺激してくる。
「鶏肉は焼いただけで美味しいもんね」
 食べたくなる気持ちはとてもわかると、アリアは頷く。しかしここで食べるわけにはいかないので、ぐっと我慢だ。
 焼き上がった鶏肉をお皿に移し、フライパンを軽く拭いて綺麗にする。
「カミル、バター取ってもらっていい?」
「ああ」
 そこにバターを入れて、玉ねぎに火を通す。途中で小麦粉を入れ、さらにしんなりするまで炒めていく。
「……小麦粉を入れるのか?」
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