しあわせ食堂の異世界ご飯6
「カミルってば……でも、まだ夕飯には少し早くない?」
 焼き上がったら熱々のうちに食べてほしいので、もう少し後でも……と思ったアリアだったが、ふいに強烈な視線を感じてハッとする。
「そんな美味しそうなものをお預けにするなんて、信じられません……!」
「アリアちゃん、いたいけな年寄りを前に我慢しろと言うのかい?」
 まるで怨念でも込められているかのような、声。
「シャルル……」
「お袋……」
 店内からじ~っと厨房を見つめるふたつの視線。犯人のシャルルとエマの姿に、アリアはカミルと顔を見合わせてぷっと噴き出す。
「なら、準備しなきゃいけないわね」
 少しいつもの夕飯より早いけれど、仕方がない。このまま熱い視線をずっと向けられていてはたまらない。
「すぐにできあがるから、ふたりは座って待っててくれ」
「はーい!」
「嬉しいねぇ」
 食べられるとわかったとたん、にこにこ顔になるシャルルとエマに呆れつつ、アリアは再び作業へ戻る。

 グラタンを窯に入れて、できあがるまでは別の作業を行う。
「私はサラダを作るから、カミルはクウちゃんのご飯をお願いしていい?」
「了解」
< 45 / 160 >

この作品をシェア

pagetop