しあわせ食堂の異世界ご飯6
 とてもありきたりな言葉しか言うことができなかったけれど、女の子との関わりがあまりないカミルにとっては、わりと精一杯だった。
 アリアは「あー……」と申し訳なさそうにしつつも、力なく首を振る。さすがに、今凹んでいる理由は簡単に口に出していいものではない。
 もちろん、話してしまったら、とても楽だろうけれど。
 カミルは予想以上にアリアの元気がないことに動揺しつつ、アリアが持つフライパンを見てぎょっとした。
「アリア、卵焼きが焦げてるっ!」
「えっ!? 嘘、本当だ!!」
 見ると、普段は色鮮やかな黄色のはずの卵焼きが、きつね色も通り越して茶色くなってしまっている。失態だ。
 まさかここまで自分がポンコツになっていたとはと、アリアはショックを受ける。慌てて卵をお皿へ移し、新しく焼き始める。
(ああっ、駄目だ。今は仕事中だっていうのに……)
 これでは料理人として厨房に立つ資格がないと、唇を噛む。けれど、このまま落ち込むわけにはいかない。
 すぐに笑顔を作り、アリアは明るい口調を意識する。
「ごめんね、すぐ新しいのを用意するから」
「…………ああ」
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