しあわせ食堂の異世界ご飯6
「今まで食べたことのない料理ですから、はしゃいでしまう気持ちはわかります」
「アリアちゃんでも、そんなことがあるのかい?」
 確かに料理に関しては妥協をしないアリアだが、自分で作っているということもあり、できあがったものをガツガツ食べるということはない。
 だからエマは不思議に思ったのだが、アリアの場合はそれが料理そのものではなく食材や調味料に向けられることのほうが多い。
 思い出すだけでも、幼少期にいろいろな人に心配をかけてしまっていた。
「たくさんありますよ。初めて見る調味料はもちろんですけど、食材も……とりあえず焼いたり煮たりしてひと通り食べていましたから」
 特に前世には存在していなかった魔法食材は、アリアの料理人魂を刺激してくれた。生でかじってみたり、ひと通りの調理方法を試したり……と。
 一般的なものであれば周囲もそれほど変な顔はしなかっただろうが、アリアは激辛でも酸味が非常に強いものでも、なんでも『食べてみないとわからないから』と口に含んでいた。
 そのせいで、周囲が目を光らせてアリアのことを見張っていた。
 アリアの話を聞いて、エマは豪快に笑う。
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