しあわせ食堂の異世界ご飯6
「隣に座ればいい。……というか、隣にいてくれ」
「あ、ええと……はい」
 どこか不安そうに瞳を揺らすリベルトに、アリアは頷くしかなかった。まるで捨てられた子犬のようだと、一瞬思ってしまったから。
(さっきまではあんなに強気だったのに……)
 アリアが座ると、リベルトの腕が伸びてきてぎゅっと抱きしめられた。
「頼むから、大人しくしていてくれ。アリアがロスタン公爵と一緒にいるところを見て、気が気じゃなかった」
「リベルト陛下……」
「……私はしばらくアリアに会っていないどころか、触れることすらできなかったのに」
 どうやら、嫉妬もあったようだ。
 アリアを自分の妃として迎え入れるため、奔走しているリベルト。そのために手段を選ばず、リズベットを己の婚約者にまでした。
「もちろんなにも説明していない私が悪い。だが――」
 どうか信じてくれと、そうリベルトが告げようとしたところで、アリアの人差し指がその唇に触れた。
「確かに言ってもらえてなかったのは悲しかったですけど、いいんです」
「…………」
「わたくしは、リベルト陛下を信じると決めましたから。そして、もう遠慮しないことに決めました」
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