しあわせ食堂の異世界ご飯6
 それだけ言って、アリアはリベルトの唇から指を離す。そのまま蕾がほころぶような笑顔を見せて、リベルトにぎゅっと抱き着いた。
「……わたくしのことを、守ろうとしてくれているんでしょう? リベルト陛下を殺そうとしてくる人が相手では、わたくしになにも知らせないほうがいいと判断することは理解できます」
 ただ、それを寂しいと思ってしまうだけで。
 守るべき対象のことを考えるならば、当然の判断である。だからアリアは、自分からうるさく言うことを止め、リベルトからも説明を求めない。
 もしリベルトに無理やり説明をさせ、アリアがリベルトの計画から外れた動きをしてしまったとしたら――多大な迷惑をかけてしまう。
 アリアはそれが嫌だった。
 だから今はなんの説明もいらないと、微笑むことにした。もちろん、すべてが片づいたときには話してくれるだろうとも思っている。
「それと、ライナス様とはなにも心配するようなことはありませんでしたよ? わたくしのことも、先日の夜会で初めて知ったみたいでしたし……。リベルト陛下との関係なんて、それこそ――」
 知らない、と。
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