婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 豪華な食事とパーティーで彼を楽しませた。愛するエリーゼも、それが名案だと言っていた。彼はいったい、何が不服だったのだ?

(考えている場合ではない)

 ラスカル大臣を追うために、スチュアートは立ち上がる。

「放っておけばいいではないですか」

 ところが、鈴が鳴るような無邪気な声に、横から制された。

 隣に腰かけているエリーゼが、スチュアートを留めようと、ジュストコールの裾を引っ張っている。

「私たちは、贅を尽くしましたわ。それなのに、満足してくださらない彼の方がおかしいのです。そのような傲慢な大臣のいる国との条約締結など、こちらからお断りですわ」

 エリーゼの言うことには、一理あった。

 以前も、スチュアートは友好条約締結のために外国の使者を王宮に招致したことがある。マイカという南にある国の者だった。

 その時は今以上に派手な食事や夜会でもてなしたが、相手はすっかり満足して、すぐに条約の締結に承認してくれた。もっとも、そのときスチュアートの隣にいて助言をくれたのは、あの憎きアンジェリ―ナだったが。

「それもそうだな」
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