婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

「お前のしでかしたことは全て知っている、アンジェリ―ナ。悪党を仕向けてエリーゼを攫わせようとしたり、亡き者にするため食事に毒を混ぜたりしたな！」

　場内が騒然とする。

「なんと、あくどい！」

「公爵令嬢、ましてや王子の婚約者がするとは思えない所業ですわ！」

　アンジェリ―ナは、無言を貫いた。

　もちろんアンジェリ―ナは、悪党など仕向けてはいないし、毒も盛っていない。

　すべてはこのゲームのシナリオ通り。アンジェリ―ナの記憶が確かなら、攫われイベントの際にエリーゼとスチュアートは初キスを済ませ、毒イベントの際に愛の告白を終えているはずだ。

　そしてアンジェリ―ナを“悪魔の塔”へと排除することで、エリーゼは晴れてスチュアートの婚約者となり、ハッピーエンディングを迎える。

「黙っているということは、認めるということだな。おおかたエリーゼへの私の寵愛に嫉妬し、しでかしたのだろう。アンジェリ―ナ、がっかりしたぞ。お前のしたことは、完全なる殺人未遂だ。たとえランバート公爵家の娘といえども、厳しく処罰しなければならない」

　スチュアートが、アンジェリ―ナに氷のような視線を注いだ。