婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
エリーゼはまさに運命の人。初めて出会ったとき、天使が空から降臨したのかと見まがったほどだ。
自分の直感は、間違ってなどいない。
貴族社会に染まった公爵令嬢とのつまらない政略結婚などではない。これこそが、貫き通すべき真実の愛だ。
スチュアートが心の中で自身を戒めていたそのとき、従者のひとりが、慌てた様子でホールの入口から入ってきた。そして目の前まで駆けてくると、床に膝をつき、息せき切りながらスチュアートに報告する。
「ラスカル大臣が、たった今お戻りになられました……!」
「――なんだと?」
スチュアートが目を剥いていると、扉が厳かに開いた。
従者を引き連れたラスカル大臣が、こちらへと歩んでくる。綿密な金の刺繍の施された濃紺のジェストコール。先ほどと、全く同じ装いだ。城を出てしばらくしてから、また引き返してきたというのか。
(なにゆえに、そのような手のかかることを)
不審な表情を浮かべているスチュアートの前で恭しく礼をすると、彼は口髭を整えたあとで、聡明な眼差しをこちらに向けた。
「先ほどの非礼をお詫びください。考えを改めました。私どもは、貴国と友好条約を締結したいと存じます」
自分の直感は、間違ってなどいない。
貴族社会に染まった公爵令嬢とのつまらない政略結婚などではない。これこそが、貫き通すべき真実の愛だ。
スチュアートが心の中で自身を戒めていたそのとき、従者のひとりが、慌てた様子でホールの入口から入ってきた。そして目の前まで駆けてくると、床に膝をつき、息せき切りながらスチュアートに報告する。
「ラスカル大臣が、たった今お戻りになられました……!」
「――なんだと?」
スチュアートが目を剥いていると、扉が厳かに開いた。
従者を引き連れたラスカル大臣が、こちらへと歩んでくる。綿密な金の刺繍の施された濃紺のジェストコール。先ほどと、全く同じ装いだ。城を出てしばらくしてから、また引き返してきたというのか。
(なにゆえに、そのような手のかかることを)
不審な表情を浮かべているスチュアートの前で恭しく礼をすると、彼は口髭を整えたあとで、聡明な眼差しをこちらに向けた。
「先ほどの非礼をお詫びください。考えを改めました。私どもは、貴国と友好条約を締結したいと存じます」