婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 贈り物をしても、アンジェリ―ナは礼を述べるどころか、『過度な出費は財政に響きます。私への贈り物は極力お控えくださいませ』とスチュアートをなじる。かわいげのない女だ。

 それに比べ、ドレスやアクセサリーのひとつひとつに顔を輝かせ、次はこういったものが欲しい、と恥じらいながらねだってくるエリーゼの可愛らしさときたら、たまったものではなかった。

 父である国王も、従者も、国民までもが、あの面白みのない女を『聡明な淑女』と過度に評価していたのも気に食わない。皆、あの女に騙されているのだ。


 翌日も、スチュアートのうっ憤は晴れなかった。

 願い叶ってアンジェリ―ナを追放したというのに、時が経るにつれ、思い出すのはあの女の勝気な顔ばかり。可愛らしいエリーゼの純真な笑みをいつだって思い浮かべていたいのに、邪魔で仕方がない。

 どこにいても、ポルトス王国との友好条約の締結を称えられるばかりで、スチュアートは面白くなかった。暗に、アンジェリ―ナの方が政治手腕に優れていると言われているように思ってしまう。
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