婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
(もとより彼女を隣に置いておけば、失敗などしなかった)

 ぎりっと歯を食いしばる。

 込み上げるのは、自分の行動に対する後悔だった。

 アンジェリ―ナに、少しでも自分を見て欲しかった。

 エリーゼを城に招いたのも、本音を辿れば、アンジェリ―ナが嫉妬にあえぐ姿を見たかったからだった。

 だが、アンジェリ―ナは自分という婚約者が居ながらエリーゼと寄り添うスチュアートを、全く咎めようとはしなかった。

(私は、アンジェリ―ナに振り向いて欲しかっただけだったのか)

 彼女がエリーゼをいじめたという噂を流したのは、スチュアート自身だ。アンジェリ―ナの敵を増やし、気丈な彼女を追い込みたかった。

 そんな状況で婚約破棄を言い渡したら、さすがのアンジェリ―ナも、泣いて自分に縋るだろうと考えたのだ。

 だが、彼女は敵地のど真ん中にひとり放り出されても、スチュアートに助けを求めはしなかった。それどころか、あろうことか数多の男と関係があったことを暴露し、スチュアートに挑戦するような眼差しを浮かべたのだ。

 あの発言を受けて、スチュアートは怒りの極致に達した。
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