婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
     ※

 子供たちに果物を配ってから数日後。

 ネクラ趣味は少しだけ休憩、とばかりに、アンジェリ―ナが昼過ぎまで部屋でゴロゴロしていると、扉をノックする音がした。

「ララかしら?」

「俺です」

 入ってきたのは、ビクターだった。ベッドに横たわる無防備なアンジェリ―ナの姿に、彼はさっそく顔を赤らめ軽く咳ばらいをする。

「どうかされましたか?」

「果物を、また調達してきました」

 嬉々とした口ぶりで、ビクターが大きく膨れた麻袋をアンジェリ―ナへと突き出す。アンジェリ―ナは、露骨に顔をしかめた。フルーツカービングには、とっくに飽きてしまったからだ。

「ビクター様。申し訳ないのですが、果物はもう必要ないのです」

 ビクターは、あからさまに表情を曇らせる。

「あなたの笑顔が見れると思ったのに……、残念です」

 大の男のはずなのに、まるで捨てられた仔犬のようにしおらしい。

(なんか、ちょっと可哀そうかも)
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