婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「あくどい令嬢に、厳重なる処罰を!」

「悪魔には、悪魔にふさわしい制裁を!」

 ギャラリーの声が湧き起こった。

 エリーゼは、怯えたような顔で事の成り行きを見守っている。

(怯えた顔もかわいいわ)

 にっこりと微笑みかければ、またもやエリーゼは戸惑いの表情を浮かべた。

「何がおかしい? この魔女め!」

 余裕たっぷりのアンジェリ―ナの様子に苦言を呈したのは、スチュアートの方だった。

「お前など、お前など――!」

(よしっ! 来る!)

 アンジェリ―ナは、スチュアートの決め台詞を心の中で待ちかねた。

 ところが。

「お待ちください!」

 聞いたことのない声が、スチュアートの次なるセリフを阻止した。同時に、疾風のごとくアンジェリ―ナの前に立ちはだかる者がいる。

(――え?)

 目前に、漆黒の騎士団服を身に付けた長身の男がいた。 

 ちらり、と男がアンジェリ―ナを振り返る。

 漆黒の髪に、鋭いブルーの瞳、シャープな整った顔。目が合うなり男は顔を赤らめると、サッと視線を反らした。そして、スチュアートの方へと向きなおる。

「アンジェリ―ナ様が、そのようなことをなさるはずがございません!」
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