婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「わっ」と驚きの声を上げながら、ビクターは部屋の中に足を踏み入れた。彼が手にしているランプが、部屋の全容をぼんやりと映し出す。

「これは……」

 ビクターが、声を震わせた。

「何があったんですか!?」

 ドアの外側に身を隠しながら、ララは中にいるビクターに懸命に問うた。

「肖像画です……」

 愕然としたビクターの声が聞こえた。

「えっ、スチュアート様の肖像画? 嘘ですよね!?」

 ビクターが危惧していたことが本当だったということか。

(ええっ! アンジェリ―ナ様、スチュアート様をお慕いしていたの? あのポンコツを!? だとしたら、趣味が悪すぎるわ!)

 動揺のあまりララは急いで部屋に入ると、立ち尽くしているビクターの背後から辺りを見回す。

 そして、心の中で驚愕の声を上げた。

(本当に、肖像画だわ……!)

 ――ただし、スチュアートではなくエリーゼの。
< 127 / 206 >

この作品をシェア

pagetop