婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
屈強な石壁のあちらこちらに掲げられた額縁の中は、エリーゼの顔で埋め尽くされていた。
黄色いドレスを着てスチュアートと並び、恥じらっている顔。スチュアートと向かい合い、満面の笑みを浮かべている顔。うっとりとした顔で、スチュアートとキスをしている顔。
エリーゼの顔は、完璧なまでに美しく描かれていた。見ようによっては、実物よりずっと綺麗なくらいだ。
その一方で、スチュアートの顔はかなりぞんざいだった。どの顔にも『へのへのもへ』という謎の落書きが雑に描かれているだけだ。
「なぜ、エリーゼ様の肖像画など、お集めになられているのでしょう……?」
一種の呪いなのかしら?と訝しんだが、それにしても美麗な絵が多い。
もやしを育てたり、そのもやしをわざわざ庭で食べたり、謎のルートで入手した果物に奇妙な模様を刻んだり、ここに来てからのアンジェリ―ナの行動はいつも不可思議だった。
その中でも、これは断トツで理解しがたい。
「――これは、なんだ?」
今の今まで押し黙っていたビクターが、唸るような独り言を吐いた。
黄色いドレスを着てスチュアートと並び、恥じらっている顔。スチュアートと向かい合い、満面の笑みを浮かべている顔。うっとりとした顔で、スチュアートとキスをしている顔。
エリーゼの顔は、完璧なまでに美しく描かれていた。見ようによっては、実物よりずっと綺麗なくらいだ。
その一方で、スチュアートの顔はかなりぞんざいだった。どの顔にも『へのへのもへ』という謎の落書きが雑に描かれているだけだ。
「なぜ、エリーゼ様の肖像画など、お集めになられているのでしょう……?」
一種の呪いなのかしら?と訝しんだが、それにしても美麗な絵が多い。
もやしを育てたり、そのもやしをわざわざ庭で食べたり、謎のルートで入手した果物に奇妙な模様を刻んだり、ここに来てからのアンジェリ―ナの行動はいつも不可思議だった。
その中でも、これは断トツで理解しがたい。
「――これは、なんだ?」
今の今まで押し黙っていたビクターが、唸るような独り言を吐いた。